+ 水沫の界(第一章1)

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 まず器が作られる。世界と、人と動植物、建築物。人と動植物の器はそれだけでも生きていくことは可能だ。一握りの感情も生命も無い只の人形としてだけなら。
 けれど世界がそれを許さない。
 生気の無い世界を『世界』が変えるため、そこに語り部を作り出す。語り部が言葉を紡げば、それは言霊として器へ流れ込み、彼等は生命を得る。



 これは世界の始まり。






 語り部の力は多くの生命を器に与えるほど絶大だが、その強さ故に歪みが生じる。歪みは世界が百度時を巡った時、限界点に達し世界は終わる。
 意図せず歪みを生み出した語り部の嘆きは深く、度々人の世に現れては破滅の回避を詠うのだ。

 ――この世はこの後百年に幕を閉じる。幾度と繰り返されてきた悲嘆と絶望の歴史、それを逃れたくば『鍵』を探すことだ。幾つかの鍵を合わせたらば或いは、滅びを免れることが出来るやもしれぬ

 ――よく探しておいで。それは目に見えるかもしれない、形の無いものやもしれない……探しておいで、悲劇を目の当たりにしたくなくば







 そしてこれが、鍵を巡る物語の始まり。



















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